2008年10月16日木曜日

NoteShare

その昔, NeXTStep上で動くキラー・アプリケーションの一つにMillennium SoftwareのNoteBookがあった. 開発用のツール (もちろんInterface Builder!) やNeXTStepに付属するアプリケーション (Mail, Librarian, Editなど) を除けば, LotusのImprov (多次元スプレッド・シートと言えばいいのか?), LightHouse DesignのDiagram! (OmniGraffleやVisioの祖先だ) とこのNoteBookがNeXTStepの上で生活するのに欠かせないソフトウェアだった. 逆に言えばこいつらのおかげで僕らはNeXTStep以外の環境では生きていけない身体 (頭) になってしまったのだ. 今から十数年前 (NoteBookが発表されたのは1993年のことだ) に, 僕らはもしかしたら今の計算機環境とさほど変わらないくらいの (いや, 今のOfficeよりは完全に勝っている!) すごい知的生産性を上げていた.


NeXTStepはその後, MacOSXになり, NoteBookはAquaMindsのNoteTakerとCircus PoniesのNoteBookに分裂した. たぶんどちらも同じNeXTStep/AppKitのコード・ベースを引き継いでいる. どういういきさつがあったかは知らないけれど, Millenniumを経営していたScott LoveとJason Adams (その前はNeXTの従業員だった. NeXTはシリコンバレーで人材の供給元で, ex-NeXT clubという元NeXT従業員のコミュニティもあった) がそれぞれAquaMindsとCircus Poniesを立ち上げたのだった. そして僕は今も毎日NoteTakerを使い続けている. NoteBookではなく, NoteTakerを選んだ理由はNoteTakerの方が早く日本語が使えるようになったとか, そういう単純な理由だったろう.


NoteTakerは基本的にはマルチ・ページのアウトライナだ. どんなファイルやデータでも放り込める. 索引を勝手に作ってくれる. タグを付けられる. Webにパブリッシュすることもできる. こういうだけだとたいした機能はないように思えるかもしれないけれど, シンプルなものこそ道具として使いやすいし, 十数年にわたって作り込まれてきた使い勝手もよい. 僕はこれで1995年以来のライフ・ログを取っているし, マニュアルや仕様書, 技術資料のほとんどをこれで作っていた時代もある. ま, 使ってみなはれ.


そのNoteTakerが最近, また進化の階段をひとつ上った. NoteShareという分散共有の技術を実現した. NoteShare Serverを立ち上げてノートブックをそこに置いておけば, ネットワーク経由でみんなでノートブックを編集できるのだ. MacOSX以外のプラットホームからはWebブラウザ上のJava Appletビューアがある (今のところは編集はできない). これは面白い. こういうことは昔からみんな考えていたわけだけど, 実際にはあまりうまく動かないものも多かった. NoteShareはよく動いている. 今ならたったの$50だ. NoteTakerとセットで$100.


で, 言いたいことは何かというとNoteShare Server (NoteShareも同じ) は些細なバグのため, 日本語環境ではうまく動かないと言うことだ. NoteShare Serverを動かしたい場合はNoteShare Server.appを右クリック, 「パッケージの内容を表示」して, Contents/Resources/Japanese.lprojを捨てるか, 名前を変えるかしてくれ給え. メニューなどは英語表示になってしまうけど, 日本語の読み書きはできるし, サーバとして使う分にはほとんど関係ない. いや, 実はそこまでしなくてもどれかのnibファイルのメニューのアクションがnullになっているとか言う話なので, それを直せばいいのだが, どれを直せばいいのか, nibの中を探すのは面倒なので:-) Aquamindsには言ってあるから, 次のバージョンではたぶん治るだろう.


Webで探しても日本語でNoteShareについて書いているものがあまりに少ないので書いてみた. 日本ではこういうイノベーティブな技術はみんなあまり必要としないのだろうか?